ロベルト・シューマン/ピアノ協奏曲イ短調op.54
第1楽章導入部のピアノの扱いが印象的な点ではよくグリーグと似ているが、その音色は憂愁を含んで、グリーグの聴かせる涼やかな寂寥感はここにはない。
(マイナー・ピアノ協奏曲シリーズで、先に奥さんのクララ・シューマンの同じ調性の協奏曲を紹介してしまいました。)
印象的なピアノに続いてロマンティックなオーケストラ・パートが後を追い、仄暗いシューマンの憂鬱が流れる。
傷つきささくれ立った神経が、痛みを残したまま癒えてゆくようにピアノが寄り添いながら同じ旋律を追う。
カデンツはシューマン自身が書いた憂愁の濃い、情熱的なものです。
第2楽章のアンダンテ・グラツィオーソの静けさもどこか悩ましく、素直な抒情ではない。
終楽章は暖かな風が通り、アレグロの軽快なテンポに心の折り合いが付いたようにピアノヴィヴァーチェの指定通り、生き生きと弾んで行く。
アルフレート・ブレンデルは、作曲家諸井 誠氏との対談で「自分のピアニストとしての地位も固まり、今ようやく自分の共演したいと思う指揮者を自分で指名できる立場になった」と話しているが、その指揮者がこのCDでロンドンSO を振っているクラウディオ・アッバードであったようだ。
彼のそんな勇躍の気分を反映するように、知性派ピアニストとして知られる彼が、その感情を思う存分解放しようとしている。ブレンデルの積極性はここで安定と結びついて成功を収めており、その実力を十二分に示している。
清潔なタッチに加え、煌めく音色の粒立ちが引き締まった造形を浮かび上がらせる。カデンツァの熱情は彼らしくないと思うほど青白く燃えている。
アッバードの指揮も幻想的な表現をシンフォニックで生命観溢れる管弦楽の魅力を引き出している。
ポリーニは、やはり盟友アッバードが指揮するベルリンフィルとの演奏である。
強靱でフレキシブルな打鍵がシューマンの憂鬱を振り払うように響く。
意志的な音塊は傷一つなく滑らかなベルリンフィルの絨毯の上を滑って行く。ゴージャス。
イタリアンの陰影がシューマンの中の憂鬱からほの白い光を探り出し、輝かせる。第1楽章のカデンツァは圧巻です。彼の才能を知悉したアッバードの棒が冴え渡っています。
ただ、ベルリンフィルのドイツ的機能美とポリーニのピアノは整いすぎてスケール感を失いがちであることは否めません。
好き嫌いが別れそうですね。ボクは好きです。
CDのカップリングはシェーンベルクのピアノ協奏曲です。彼ららしいね。シェーンベルクは凄くいいですね。
シューマン/シェーンベルク:ピアノ協奏曲
- アーティスト: ポリーニ(マウリチオ), シューマン, シェーンベルク, アバド(クラウディオ), ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1996/04/25
- メディア: CD(おすすめ!)
グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲
- アーティスト: リヒテル(スヴャトスラフ), グリーグ, シューマン, マタチッチ(ロヴロ・フォン), モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2001/09/27
- メディア: CD
グリーグ&シューマン:ピアノ協奏曲
- アーティスト: リパッティ(ディヌ), グリーグ, シューマン, ガリエラ(アルチェオ), カラヤン(ヘルベルト・フォン), フィルハーモニア管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: CD
録音は古いですが、リパッティシューマンは誠実さにおいて典型です。
シューマン:ピアノ協奏曲
- アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン) ツィマーマン(クリスティアン), シューマン, グリーグ, カラヤン(ヘルベルト・フォン), ツィマーマン(クリスティアン), ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/09/05
- メディア: CD
昔はよく、FMで流れていた組み合わせです。才能ある新人が出るとカラヤンは、ほとんど協演しています。新しもの好きとも言えますが、慧眼恐るべしですね。
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シューマン:ピアノ協奏曲/他
- アーティスト: ペライア(マレイ), シューマン, アバド(クラウディオ), ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ソニーレコード
- 発売日: 1997/11/21
- メディア: CD
マレイ・ペライアは男イングリット・へブラーと言った感じのタッチの持ち主ですが、モーツアルトで魅せる慎みと敬愛をここでは全解放して、ファンタジックです。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ), チャイコフスキー, シューマン, デュトワ(シャルル), ロストロポーヴィチ(ムスティスラフ), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団, ワシントン・ナショナル交響楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2006/11/08
- メディア: CD
走りすぎるとハチャメチャですが、ここでのアルゲリッチは素晴らしいですね。メインのチャイコフスキーは円満ですが、シューマンは幻想性と危うさが混然としていて、ロストロおじさんの広い寛容の中で自由に羽ばたいていてボクは好きです。



2007-10-25 06:15
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